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"연회자리의 색과 맞추려면 딱 좋아. 무었보다 주상과 균형을 생각하고 있어" | "연회자리의 색과 맞추려면 딱 좋아. 무었보다 주상과 균형을 생각하고 있어" | ||
− | 교쿠요우의 머리를 | + | 교쿠요우의 머리를 빗던 시녀장인 紅娘이 답한다. 단지 그녀도 너무 가라앉은 색감이라고 생각이 있는 듯, 빗을 놓고 의상실에 간다. 桜花가 들고 있던 장식품에 비녀 하나를 더 더한다. |
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2018년 11월 12일 (월) 15:48 판
원유회를 수일 후를 앞두고 교쿠요우는 방에서 시녀들과 복장을 확인하고 있었다.
"교쿠요우님, 역시 수수하지 않겠습니까?"
인화가 복장에 장식품을 맞추며 고개를 갸웃거린다. 복장색은 빨강, 비일 때부터 바꾸지 않고 사용하는 색이지만 살짱 이 색감은 어둡다.
"살짝 멍하시기 않은가요?"
"연회자리의 색과 맞추려면 딱 좋아. 무었보다 주상과 균형을 생각하고 있어"
교쿠요우의 머리를 빗던 시녀장인 紅娘이 답한다. 단지 그녀도 너무 가라앉은 색감이라고 생각이 있는 듯, 빗을 놓고 의상실에 간다. 桜花가 들고 있던 장식품에 비녀 하나를 더 더한다.
頃合いが難しいのだろう。
以前、後宮にいた時なら、いかに他の妃を出し抜けるかが基本になっていた。なので、ある程度の常識をわきまえつつ、どう遊びを入れるかが侍女たちの楽しみだったのだが、今はちょっと状況が異なる。
「紅娘さま。それ、入れるんですか?」
紅娘が持ってきた簪に、桜花が難色を示す。
「あら、変?」
「私もいいと思うんですけど、前に付けていたことあったじゃないですか。あのとき、皇太后の侍女がその時の衣装を観察していたんですよ」
「なら、駄目ね」
紅娘は、簪を戻す。
基本、大きな宴で使った衣装は、また大きな宴で使うことはない。華美な装飾を作り替え、お茶会などちょっとしたお洒落着にまで落とされる。
小さな装飾品であれば、何度か使うこともあるが、同じものしか持っていないと思われるわけにはいかない。
「でも地味ですよねえ」
「そうねえ」
二人が唸っている。
玉葉としては、彼女らの意見もわからなくもない。
「色合いはともかく、ぱっと印象に残るものが欲しいです。大きな玉とか」
翡翠ならたくさんあるが、どうにも今回の服には合わない。もっと透明度が高くすっと引き込まれるものがあれば好ましい。
「水晶とか」
他には。
「西方で研磨された金剛石とか」
「今から探すのは難しいでしょう。あれば、職人に急がせて作るんだけど」
とはいえ、探してみる気だ。衣裳部屋にまた向かう紅娘。他の妃よりも質素だと言われていた玉葉であるが、それでも現在は后だ。水晶の一つや二つくらい持っている。
だが――。
「それじゃ、何か面白くないのよね」
玉葉はぺろりと舌を出す。
後宮を出てからすっかり娯楽が減ってしまった。子どもたちと過ごす日常は楽しいし、主上も后という立場から色々気遣ってくださる。
でも、玉葉はまだ二十をいくらかこえただけの女だ。娘時分のころからの好奇心は、まだまだ健在である。
「どうせなら面白いものがいいわね」
にっこりと笑い、椅子から立ち上がる。
そして、こっそりとある物を取りに行く。二人の侍女たちは玉葉がどこに何を取りに行ったのか気づかない。
「紅娘、桜花―」
「はい、どうかされましたか?」
すかさずやってくる二人に、玉葉は布に包まれた石を見せる。石の数は三つ。透明度の高い結晶で、反対側が透けて見える。
「……こんな水晶ありましたか?」
紅娘が困惑している。
逆に、桜花は目を丸くして結晶と玉葉を見比べている。玉葉が片目を閉じると、何が言いたいのかわかったらしく、紅娘に気付かれぬようそっと親指を立てて返事する。
「こういう形にしたいんだけど」
玉葉は机に向かうと置いてあった筆でさらさらと簡単な絵を描く。鬼灯のような、行燈のような形をした簪の絵だ。籠のようにしてもらい、中の結晶が見えるようにしてもらいたい。二人に説明を付け加えて、結晶と紙を桜花に渡す。
「桜花、早速頼んできてちょうだい」
「玉葉さま、注文ならいつも私が――」
桜花に渡した結晶を取ろうとするが、それは困ると玉葉は立ちはだかる。
「たまには桜花でもいいでしょ? 桜花だってわかっているはずだから」
「それはそうですが――。玉葉さま、何か企んでません?」
「……」
鋭い。さすが侍女頭。玉葉が子どものころからのお目付け役なだけのことはある。
しかし、向こうが玉葉を知っているように、玉葉もまた紅娘のことをわかっている。
「――だって、いつまでも紅娘ばかりに頼るわけにはいかないでしょ?」
視線を落とし、上目遣いに紅娘を見る玉葉。
その様子に紅娘はきりっとした顔をする。
「いえ、私は玉葉さまの侍女頭として、ちゃんと仕事をしますので」
「でも、それだと結婚できないじゃない」
『結婚』という言葉が、紅娘の表情を一変させた。雷が鳴り響くような衝撃を受けている。
「け、結婚……」
紅娘はまだまだ元気で綺麗だが、とうに結婚適齢期は過ぎている。十代半ばから二十代前半で結婚する者が多い中、紅娘は三十と二つという年齢だ。医術の心得がある猫猫曰く「まだまだ子どもが産める年齢です」とのことだが、本人は焦っている。
どれくらい焦っていたかと言えば、後宮にいた頃は、たとえ宦官であっても、と高順を狙っていた時代があったくらいだ。ちなみに高順は宦官ではなかったものの、年上の鬼嫁がいるらしいとのことできっぱり諦めている。
「紅娘はなんでも一人でやってしまう。これだと、あなたがいなくては、私は何も出来なくなってしまうわ。せめて他の侍女たちに仕事をふらないと」
有能すぎる故、殿方も近寄り難かろう。
玉葉が十五で入内したとき、紅娘も来ることになった。後宮というある意味伏魔殿に向かうには、有能な侍女が必要だったのだ。当時、他に年長の侍女が数人いたが、玉葉が主上のお手付きになり、命が狙われる立場になると、一人、また一人故郷へと帰っていった。結婚を理由にする者もいれば、毒見で倒れた者もいた。
残ったのは、紅娘とまだまだ若く未熟な桜花たち三人娘だけだった。きっと自分がやらねばならぬと、ずっと張り詰めていたことだろう。
娘が生まれると一時的に乳母を雇い入れたが、砂の大地でずっと育ってきた玉葉は、誰が敵で味方かわからないと、新しく侍女を入れることはなかった。
そんな中で入ったのが猫猫である。
あの子がいた頃は面白かった、と思い出にふけりそうになるが、今はそんなことを考えている時ではない。
玉葉の暇つぶしのためにも、全力で紅娘を誤魔化さねばならない。
「父も以前言っていたのよ。紅娘にはいつかいい縁談を用意せねばと」
「玉袁さまが……」
感動する紅娘。
嘘ではない。父は、「紅娘の子どもなら、男でも女でも優秀だろう」と言っていた。乳兄弟になるのはもう遅いが、しっかり仕えてくれるだろうと。
「以前と違い、侍女も増えたの。あなたがいつまでも気負う必要はないのよ」
東宮の出産のために、故郷から三人侍女がやってきたし、后になってからさらに増えた。
「不安なのはわかるわ。後宮ではないにしろ、ここもまた女の戦場。何があるかわからない。でも、あなたはもう一人じゃないの。もっと自分の将来のことも考えて、生きて頂戴」
玉葉は我ながらこうも舌先三寸で言えるものだと感動した。この性格が幸いして、女の戦場でも生き残っているのかもしれない。
「玉葉さま。あなたがそのように私のことを……」
紅娘の目が潤んでいた。
「わかりました。今から、愛藍と貴園を呼んでまいります。あの子たちに私の仕事がどこまで任せられるか確かめます」
早速やる気になって、部屋を出て行った。
その横顔は、恋する乙女のように紅潮していた。
「……」
玉葉は部屋に一人残されたところで、また机の筆記用具に手を伸ばす。
冗談でしたでは済まされない。都にいる玉袁にいい縁談がないか文を書くことにした。