약사의 혼잣말/진씨편/22.상궁의 책임

다메즈마 (토론 | 기여)님의 2018년 11월 12일 (월) 23:22 판

원유회를 수일 후를 앞두고 교쿠요우는 방에서 나인들과 복장을 확인하고 있었다.

"교쿠요우님, 역시 수수하지 않겠습니까?"

인화가 복장에 장식품을 맞추며 고개를 갸웃거린다. 복장색은 빨강, 비일 때부터 바꾸지 않고 사용하는 색이지만 살짱 이 색감은 어둡다.

"살짝 멍하시기 않은가요?"
"연회자리의 색과 맞추려면 딱 좋아. 무었보다 주상과 균형을 생각하고 있어"

교쿠요우의 머리를 빗던 상궁인 紅娘이 답한다. 단지 그녀도 너무 가라앉은 색감이라고 생각이 있는 듯, 빗을 놓고 의상실에 간다. 桜花가 들고 있던 장식품에 비녀 하나를 더 더한다.

철에 맞게 하는 게 어려운 거겠지. 이전에 후궁에 있던 때에는 어떻게 다른 비를 앞지를 것인지가 기준이었다. 그렇기에 어느 정도 상식을 떨치며 어떤 특색를 넣을까가 나인들의 즐거움이었지만 지금은 살짝 상황이 다르다.

"紅娘님 그거 넣을 것입니까?"

紅娘이 들고 온 비녀에 桜花가 난색을 표한다.

"어머 이상한가?"
"저도 좋다고 생각합니다만 전에 단 적이 있었지 않습니까. 그 때 황태후쪽 나인이 그 때 복장을 관찰했습니다."
"그럼 안되겠네"

紅娘은 비녀를 제자리에 둔다.

기준, 큰 연회에서 사용한 복장은 혹은 큰 연회에서 사용한 적이 없는. 화려한 장식을 바꿔 쓰며 다과따윌 살짝 화려한 복장까지 점령한다. 작은 장식품이라면 몇 번인가 쓴 적도 있지만 한 종류만을 지녔다고 여겨질 수는 없다.

"하지만 수수하지요"
"그러네"

둘이서 끙끙 앓는다.

교쿠요우로서는 그녀들의 의면도 이해 못하는 것도 아니다.

"색감을 통일하는 건 둘째치고 확 인상에 남는 게 필요합니다. 큰 구슬이라든가"

翡翠이라면 잔뜩있지만 도저히 이번 옷에는 안 맞는다. 좀 더 투명도가 높아 확 끌리게 하는 게 있다면 좋겠다.

"수정이라든가"

혹은

"서방에서 연마된 금강석이라든가"
"지금부터 찾는 건 어렵겠죠. 있다면 장인에게 급히 만들라 시키겠지만"

그렇다 해도 찾아볼 마음이다. 의상실에 또 향하는 紅娘.

 とはいえ、探してみる気だ。衣裳部屋にまた向かう紅娘。他の妃よりも質素だと言われていた玉葉であるが、それでも現在は后だ。水晶の一つや二つくらい持っている。


 だが――。


「それじゃ、何か面白くないのよね」


 玉葉はぺろりと舌を出す。


 後宮を出てからすっかり娯楽が減ってしまった。子どもたちと過ごす日常は楽しいし、主上も后という立場から色々気遣ってくださる。


 でも、玉葉はまだ二十をいくらかこえただけの女だ。娘時分のころからの好奇心は、まだまだ健在である。


「どうせなら面白いものがいいわね」


 にっこりと笑い、椅子から立ち上がる。


 そして、こっそりとある物を取りに行く。二人の侍女たちは玉葉がどこに何を取りに行ったのか気づかない。


「紅娘、桜花―」

「はい、どうかされましたか?」


 すかさずやってくる二人に、玉葉は布に包まれた石を見せる。石の数は三つ。透明度の高い結晶で、反対側が透けて見える。


「……こんな水晶ありましたか?」


 紅娘が困惑している。


 逆に、桜花は目を丸くして結晶と玉葉を見比べている。玉葉が片目を閉じると、何が言いたいのかわかったらしく、紅娘に気付かれぬようそっと親指を立てて返事する。


「こういう形にしたいんだけど」


 玉葉は机に向かうと置いてあった筆でさらさらと簡単な絵を描く。鬼灯のような、行燈のような形をした簪の絵だ。籠のようにしてもらい、中の結晶が見えるようにしてもらいたい。二人に説明を付け加えて、結晶と紙を桜花に渡す。


「桜花、早速頼んできてちょうだい」

「玉葉さま、注文ならいつも私が――」


 桜花に渡した結晶を取ろうとするが、それは困ると玉葉は立ちはだかる。


「たまには桜花でもいいでしょ? 桜花だってわかっているはずだから」

「それはそうですが――。玉葉さま、何か企んでません?」

「……」


 鋭い。さすが侍女頭。玉葉が子どものころからのお目付け役なだけのことはある。


 しかし、向こうが玉葉を知っているように、玉葉もまた紅娘のことをわかっている。


「――だって、いつまでも紅娘ばかりに頼るわけにはいかないでしょ?」


 視線を落とし、上目遣いに紅娘を見る玉葉。


 その様子に紅娘はきりっとした顔をする。


「いえ、私は玉葉さまの侍女頭として、ちゃんと仕事をしますので」

「でも、それだと結婚できないじゃない」


 『結婚』という言葉が、紅娘の表情を一変させた。雷が鳴り響くような衝撃を受けている。


「け、結婚……」


 紅娘はまだまだ元気で綺麗だが、とうに結婚適齢期は過ぎている。十代半ばから二十代前半で結婚する者が多い中、紅娘は三十と二つという年齢だ。医術の心得がある猫猫曰く「まだまだ子どもが産める年齢です」とのことだが、本人は焦っている。


 どれくらい焦っていたかと言えば、後宮にいた頃は、たとえ宦官であっても、と高順を狙っていた時代があったくらいだ。ちなみに高順は宦官ではなかったものの、年上の鬼嫁がいるらしいとのことできっぱり諦めている。


「紅娘はなんでも一人でやってしまう。これだと、あなたがいなくては、私は何も出来なくなってしまうわ。せめて他の侍女たちに仕事をふらないと」


 有能すぎる故、殿方も近寄り難かろう。


 玉葉が十五で入内したとき、紅娘も来ることになった。後宮というある意味伏魔殿に向かうには、有能な侍女が必要だったのだ。当時、他に年長の侍女が数人いたが、玉葉が主上のお手付きになり、命が狙われる立場になると、一人、また一人故郷へと帰っていった。結婚を理由にする者もいれば、毒見で倒れた者もいた。


 残ったのは、紅娘とまだまだ若く未熟な桜花たち三人娘だけだった。きっと自分がやらねばならぬと、ずっと張り詰めていたことだろう。


 娘が生まれると一時的に乳母を雇い入れたが、砂の大地でずっと育ってきた玉葉は、誰が敵で味方かわからないと、新しく侍女を入れることはなかった。


 そんな中で入ったのが猫猫である。


 あの子がいた頃は面白かった、と思い出にふけりそうになるが、今はそんなことを考えている時ではない。


 玉葉の暇つぶしのためにも、全力で紅娘を誤魔化さねばならない。


「父も以前言っていたのよ。紅娘にはいつかいい縁談を用意せねばと」

「玉袁さまが……」


 感動する紅娘。


 嘘ではない。父は、「紅娘の子どもなら、男でも女でも優秀だろう」と言っていた。乳兄弟になるのはもう遅いが、しっかり仕えてくれるだろうと。


「以前と違い、侍女も増えたの。あなたがいつまでも気負う必要はないのよ」


 東宮の出産のために、故郷から三人侍女がやってきたし、后になってからさらに増えた。


「不安なのはわかるわ。後宮ではないにしろ、ここもまた女の戦場。何があるかわからない。でも、あなたはもう一人じゃないの。もっと自分の将来のことも考えて、生きて頂戴」


 玉葉は我ながらこうも舌先三寸で言えるものだと感動した。この性格が幸いして、女の戦場でも生き残っているのかもしれない。


「玉葉さま。あなたがそのように私のことを……」


 紅娘の目が潤んでいた。


「わかりました。今から、愛藍と貴園を呼んでまいります。あの子たちに私の仕事がどこまで任せられるか確かめます」


 早速やる気になって、部屋を出て行った。


 その横顔は、恋する乙女のように紅潮していた。


「……」


 玉葉は部屋に一人残されたところで、また机の筆記用具に手を伸ばす。


 冗談でしたでは済まされない。都にいる玉袁にいい縁談がないか文を書くことにした。