귀족 그만둡니다, 서민이 되겠습니다 64화

다메즈마 (토론 | 기여)님의 2018년 7월 18일 (수) 03:01 판

살짝 신경써준 것일지도 모르지만 어차피 딕씨는 다큰 남자인데다 더욱이 체격이 좋아 꽤 체력이 있는 위사님이기에…… 그렇습니다. 이 사람 걸음걸이 빠른 겁니다.

느긋하게 걷고있는 것처럼 보인다만 나보다는 훨씬 빠르다. 따라서 나는 종종걸음으로 혹은 때때 종종걸음으로 따라간다.

암탉여관으로 갈 때는 거리는 둘러보며 갔으니까 느긋하게 갔지만 지금은 왕궁으로 돌아가는 것뿐이니기에 자연스럽게 걸음걸이가 빨라졌다.

햇살도 주홍색이 짙어진 저녁이 되었다.


"딕씨 여기까지 오면 이제 혼자서도 갈 수 있으니까 배웅해 주지 않아도 괜찮아요."

"나도 왕궁에 왕도에 왔다고 알리러 가야하니까 신경쓰지마"


'아~ 뭐야 딕씨도 왕궁에 볼일 보러 가는 거구나"

딕씨가 굳이 나때문에 왕궁에 가는 건가해서 마음이 편하지 않았기 때문에 나는 마음이 편해졌다.


마음을 풀고 내가 잠깐 설 때 서두르는 듯한 남자가 뒤에서 쾅, 하고 달려오다 부딧쳤다.

힘을 주고 있지 않았기 때문에 나는 잔뜩 빙글빙글 비틀거려 버렸다.


"우왓"

"어이쿠 괜찮아?"


비틀거리는 내 팔을 바로 잡아준 것은 딕씨. 한 팔만으로 내 몸을 지탱하는데도 딕씨는 전혀 흔들리지 않는다.

하아, 덕분에 넘어지지 않았어.


장난아니게 든든하고 커다란 손바닥. 검을 많이 휘둘러야 생긴다는 굳은 살도 있다. 힘을 뺀 모습인데 날 잡은 힘은 강해서 아플 정도이다.

남성에게 몸을 기댄 것에 놀라기 이전에 나는 딕씨의 단련된 몸의 일면을 알게 되어 놀랐다.

강하다고 하여 자만할 법도 한데 이 사람은 매일 몸을 단련하는 것을 깨달았다.

'호신술을 배울 때는 몰랐는데'


보비루스씨나 마스터의 팔이나 손에는 무수하게 많은 자잘한 상처가 새겨져있다. 깨진 손톱도 있다. 프라이팬을 쥘 때 주로 사용하는 오른팔만이 반대팔 보다 더욱 근]ボビルスさんやマスターの腕や手には無数の細かいやけどの痕と切り傷がある。割れた爪もある。フライパンを主に振る右手だけがやけに筋肉隆々なことも見て知っている。

あれと同じだ。

ディックさんもその道を究めた人なんだ。その結果が皇国警備隊の上のほうの役職なんだ。


なんかズルいなんて思っちゃ失礼だった。

ちゃんと努力して身に付けたものなんだ。今もちゃんと努力しているんだ。


「何ボーッとしているんだ?それにしても色気無い悲鳴だな。ここはキャッっていうとこだろ。」


むー。思わず頬が膨らむ。

ディックさん、乙女の扱い方の勉強してくださいよ。心の中で私は舌打ちした。

せっかく感心して褒めていたところなのに。

先に歩き出したディックさんの後ろ姿をパタパタと私は追いかけた。


◇◇◇


「それでアーシャ、仕事はどうだ?」

「順調です。まだ慣れることが優先で、仕事と言うほどのことはしていませんが。」


前を向きながら、何ともないことのようにディックさんは質問してきた。

私も淡々と返答する。

歩き進んで行くにつれて、街の高台にある王宮が大きく見えてくる。


「今回の警備隊の定期報告、報告者に俺が指名されて来たんだ。更に第3皇子から「遊びに来い」との声までかかっている。お前何した?」

「だから、まだ仕事と言うほど仕事していませんって。何もしていませんよ。」


顎に手をやり、ディックさんはボソリと呟く。


「じゃあ、これから何かするのか…。ずっと接触の無かったルーデンス殿下からの声かけだから、絶対アーシャがらみだと思うんだよな。」


最後の方の声は小さく私には殆ど聞こえなかった。


私は何にも分かりません。

庶民になることが延期された今、(私はそう信じている!)とりあえず上司の皇子について仕事してお金を稼ぐ。これが現状の私。

よく分からない王宮での生活。言われたことをする日々の生活で精一杯ですよ。

きっと庶民になることにプラスになることがあると信じている。プラスになるスキルを何か身に付けなくちゃ。


そうこうするうちに王宮の出入り口に到着です。

検問を受けて2人とも無事入城です。

堂々と検問所にいる衛兵に対応するディックさん。さすがだわ。


「送っていただきありがとうございました。」


私は丁寧な礼をディックさんへ贈る。

「またな。」と右手を挙げて挨拶を返した後、ディックさんは王宮前宮左翼側に消えていった。警備関係だからそこなのか。まあ、私と会うことはしばらく無いだろう。

私は中宮奥の東に位置する官舎へと向かう。

身を照らす日はだいぶ弱くなり、時折吹く風が身体を冷やす。


エイダさんは私の友人になった。

ディックさんは…護身術を教えてもらったし、師匠?でいいかな。心の中で呼ばせてもらおう。実際に呼んだら、さらに威張られそうだから。

あとは王宮内での知り合いが増やせたらいいなあ。友人になれたら更に良し。でもこれは難しそう。気長に行くしか無いね。



◇◇◇



ディックさんと再会した休日の翌日から、書類の清書とお届け物が中心だった私の仕事は、王都治安相談部屋へ来る面々の持って来た文書やメモ書きの清書とまとめへと変化していった。ある程度の事務仕事は出来ると判断されたのだと思う。

文書やメモ書きは一度ルーデンス殿下が目を通してから手渡されるから、私が読んで問題ない内容なのだろうな。

幸い皆さん達筆で、惚れ惚れするような文字をお書きになるので、走り書きのようなメモ書きであっても何が書いてあるか分かるのは有り難かった。

それでも、関連性を見つけてまとめるにはまだまだ実力不足と自分でも分かる状態であった。

初めて見る地名に聞き慣れない用語などを手元の本で確認していれば、たった数行のメモの内容を把握するのにかなりの時間を要することも多々あったからだ。


(あー、図書館に行って王都の地図と治安関係の用語集をきちんと読んで勉強しなくちゃダメだわ。まとめるには総合的知識が必要よね。)


ドルシエ先生から私が身に付けた地理は、エフェルナンド皇国の主要都市名と特産品、周辺国の名と特色くらいなものだ。

灯台もと暗し…サウザント家の近くの街と王都中心の一部しか王都の地理は分からない。

治安に関してなんて気にもかけたこと無かったわ。


私は文書やメモ書きの知らない地名や用語を他の用紙に書き写すことをセッセと業務の合間にしていた。

周りの様子も音も気にならないほど集中していていた時、ルーデンス殿下から「お客さんにお茶を淹れてくれ。」と指示を出された。いつの間にかお客様がいらしていたらしい。私がお茶を淹れて良いのかな?


疑問を持ちつつ、そそくさと自分に与えられた机から、部屋付き侍女さんが用意してくれたお茶セットへと移動する。

ソファを見ればお客様の濡れ羽色の黒髪が目に映った。

(ん?)

ちょっと気になったが、まずはお茶をお客様に早くお出ししなくては。

いつもの様に丁寧に丁寧にお茶を淹れる。うん、良い色だわ。

まずはルーデンス殿下に、続いてお客様に。

「どうぞ。」

余計なことは話さないでお茶をテーブルに並べる。

今の私はレディ・アンなのだから。深く素性を知られる必要は無い。


お辞儀をして、サッサと下がる。

なんか強ーい視線を感じるんですけど。首をかしげないでくださいよ。


「おおぅ?!あぁー。」


人を指差すのは、貴族平民関係無くお行儀悪いですよ。

眉をしかめて見返せば、口をポカンと開けたディックさんがソファに座っていた。私の姿は充分ディックさんを驚かせたようだ。

側にはククッと肩をふるわせて笑いを堪えているルーデンス殿下の姿がある。


「またな。」と言ったディックさんの言葉通りの再会です。